2019年5月24日金曜日

大哺乳類展2 棘突起から分かること

上野の科学博物館の特別展に行って来ました。
前回、、の記憶が大分薄らいでますが、
今回は、、かなり力が入ってたように思います。


■私的見どころ指南

背骨を見て、哺乳類の運動を感じ取ろう、
という見どころです。
個人的興味から、骨の感じと動作の感覚を自分の中に落とし込むようにしています。

複数種の骨格が並んでいると差異が明確になってくるため、
あっちの骨格の感じと、
こっちの骨格の感じに個性を感じ、
何となく自分の中で感触が肉迫してきます。

おそらくこうした観点で骨格を観る人はまれなので、
知ってる限りではガイドとなるようなものはありません。
どこかの誰かが面白がってくれるかもしれないので、書いてみます。

テーマは
棘突起から感じる哺乳類」、、、


■背骨の差異

入り口を入ると、右の壁側に
「サンショウウオ」「イリオモテヤマネコ」「オオトカゲ」がおります。
まずは背骨の形に注目して下さい。

両生類のオオサンショウウオの背骨は変化に乏しく、
頚椎(首の背骨)と胸椎(胸の背骨)の違いもほとんどありません。
復元するときに順番を間違えても、たいした問題にならないレベルです。

爬虫類のオオトカゲの背骨も変化に乏しいですが、
頚椎だけははっきりとした特徴を持っています。

哺乳類のイリオモテヤマネコの背骨はどうでしょう?
先に二種をよく見ておくと、
イリオモテヤマネコの背骨が変化に飛んでいることがよく分かります。

ここから推測されるのは、
・同じ形の背骨は、同じ動きをするだろう。
・違う形の背骨は、違う動きをするだろう。
ということです。

オオサンショウウオは顔を上げることができず、
体全体を左右にくねらせることしかできません。

オオトカゲは体全体を左右にくねらせますが、
首の動きに一定の独立があります。

そしてイリオモテヤマネコ。
頚椎、胸椎、腰椎、それぞれ特徴が違います。
哺乳類以降、顕著になるのは胸椎と腰椎の差異です。
ここで注目してほしいのが、棘突起です。
背骨に生えている「棘状」の突起の向き、、、
胸椎と腰椎では逆方向を向いています。
その境い目は正確には下部胸椎にあります。

どうやらそこを境に動作が反対なのだろう、
という推測が成り立ちます。


■棘突起の差異

哺乳類は胴体を2つに折ることが出来る唯一の脊椎動物です。
背中を丸められる、という言い方もできます。
2つに折ってバネの力をため、
それを開放することで背骨から高い瞬発力を発揮します。

ヒトにいたっても同様ですが、
哺乳類は垂直跳びも、水平跳びも、背中を丸めることで腱や靭帯に張力をためます。
短距離走でもクラウチングスタートの姿勢で丸まって、一気に開放する手法が取られます。
しかし近年は、スタートから猫背をゆっくり開放することで安定した走力につなげています。

話は戻って、、、
イリオモテヤマネコを見たあとで近くのイヌを見ます。
極端な違いはありませんが、
よく見ると胸椎腰椎の棘突起の向きの変わり目がちょっとだけ大人しいです。
イヌはネコほど背骨の曲げ伸ばしをしないからです。

次はライオンの骨格。
こちらもイリオモテヤマネコほど棘突起の変わり目を感じません。
背骨の曲げ伸ばし、瞬発力はいかばかりかと、体に迫って来ませんか?

次はパンダ、ちょっと戻るとあります。
パンダの棘突起は、驚いたことに腰椎も、胸椎同様に尾の方に倒れています。
この傾向はクマにも見られます。
両種とも、哺乳類の特長である背骨の瞬発力を活かした跳躍が見られません。

次はウマ
ネコやイヌよりもパンダやクマに近いことが分かります。
イリオモテヤマネコの骨格をジロジロ見て、
何となくその跳躍力を体の中に感じていると、
ウマの棘突起に違和感を覚えます。

中部胸椎くらいからみんな腰椎みたいなので、
走りたくても走れない感覚におちいります。
そういう感触が得られると、
ちょっとウマを理解した、ウマに肉迫した気がしてきます。

さてさて、みんなの大好きなチーターに向かいます。
体格のわりに棘突起が細い。
棘突起の向きがそれぞれ個性的。
胸椎よりも、さらに腰椎はそれぞれの棘突起の差異が大きく個性的。

イヌやネコの瞬発力は主に後肢側にあり、
背骨で言うと腰椎側にあります。
瞬発力を追求した結果、チーターは今の骨格にいたったのでしょう。

チーターの下部胸椎付近の棘突起の小ささと倒れ込み方、
こうしたところにも背骨を大きく曲げる性能と感性が見て取れます。

背骨を大きく曲げ伸ばしする走法には大きな欠点があります。
内臓の揺れが前後に大きいので、
胸腔を押しつぶしてしまいます。
結果的に呼吸がままならなくなるため、
持久力を発揮することができません。

呼吸の確保と走力の確保。
こうした視点をもって、今度は蹄のある動物を観ていきます。
さっきまでほど親切に解説しませんので、
適当に読み飛ばして下さい(笑)


■蹄のある動物

ウマ、ウシ、シカ、、、
蹄のある動物はたいてい植物食です。
肉よりも消化時間がかかるため、
内蔵は長い時間中身が満たされたままとなります。
つまり背骨を曲げ伸ばしすると、肉食動物よりもはるかに苦しいのです。

背骨を大きく動かさない走法を選んだため、
動きのダイナミズムは減少し、
棘突起の胸椎腰椎の差異が少なくなります。
また棘突起同士がぶつからないので、隣同士が近接します。
扁平な板状になったのです。


■蹄のある動物には項靭帯が発達

有蹄類のほとんどは上部胸椎が非常に長くなります。
頭からつながる項靭帯が発達するからです。

多くの有蹄類は頭を振りながら、胴体を牽引します。
項靭帯を使って曲突起経由で背骨を牽引するのです。

頭が大きいほど、項靭帯が強力なほど、上部胸椎も長くなります。
頭の振り方は、そのまま種の特徴となります。
会場には映像も流れているので、よく観察してみて下さい。


■ヒトにも項靭帯

項靭帯はヒトにも特徴的に発達します。
ご存知ですか?
われわれも頭を積極的に運動に使ってきたのです。

項靭帯を強く使うときは、顔を前に出すのが定番です。
整体的に言う「肺の力が抜けた状態」でもそうなりますが、
項靭帯を使った状態は、それとは少し違って高い運動性を発揮します。

スポーツでは卓球選手によく見られます。
格闘技ではボクシングです。
おそらくボクシングが一番多用かつ応用されてると思います。

頭の重さを利用して項靭帯に張力を保つことで胸椎に力を保持し、
それを肩甲骨につないでおくことで腕を支え、
頭の動きと連動させて腕を動かすという理屈です。
よく分からないかもしれませんが、この解説はここまでにして、、、


ウマは走るとき頭を横に振ります。
棘突起におけるテンションは上部胸椎に集中するため、
上部胸椎の棘突起に大きな高まりがあります。


ウシの仲間はたいていうつむくように頭を振ります。
バイソンにおいて究極形が見られますが、
棘突起の高まりはなだらかな稜線を描きながら仙骨に届きます。
頭の動きがそのまま全身を引っ張ってる感じが分かります。
ちなみにうつむいた時に一番力が集中するところにツノがあります。
あの運動性がツノを生んだと考えています。


ブラックバックというウシの仲間はウシらしくない走りをします。
会場で詳細な映像が見られます。
背骨を少々曲げ伸ばしするせいか、腰椎の棘突起が少し頭の方に向いてます。
ネコほど背骨は曲げたくない、
でももっと速く走りたい、
そんな思考を感じます。


レイヨウ、アンテロープなどの上に跳ねながら走るグループは、
ツノが直線的で長くなります。
これも選んだ運動が導いた形態と思っています。
もちろん、誰もそんなことは言ってません。
私が思ってるだけです。長いこと思ってたので、今はもう確信しています。


いかがでしょう、
観る楽しみが生まれたでしょうか?
このへんにしますので、興味のある方は会場に行かれて下さい。



私は博物館に行くと、こんな感じでどこか一箇所を見て回ったりします。
なにか見いだせないだろうか、
なにか分かってこないだろうか、
なにか感じ取れないだろうか、
そういう平凡な作業です。

行きつ戻りつしないと差異が見いだせないので、
混んでると、はかどらないのですが、
今回はおそらくたまたま空いてたのでラッキーでした。


哺乳類はわれわれの隣人であり、
かつてわれわれも持っていた運動の感性があるかもしれず、
あるいは身につけようとした感性だったかもしれず、
いずれかの時代に感性の方向が二分した仲間かもしれず、
骨格から、その中身を感じ取ろうとするのは個人的には興味深いです。

同様に、
脊椎動物として、
爬虫類の感性を見出すことも興味深いものです。

歴史を掘り起こしてるような、
自分を掘り起こしているような、、
そんな楽しみですね。


■あらためて概要

大哺乳類展2
6/16まで
上野、国立科学博物館
大人 1,600円 当日は常設展も入れます。

<リピーターズパスの宣伝>
1,500円で常設展一年間入れます。
先に常設展側でリピーターズパスを買って、特別展に行って下さい。
特別展は大体+980円で入れます。

常設展の料金は600円です。
一年以内に3回来れば元が取れます。
元が取れなくても、1,500円なら科博に出資しよう、という考えもありだと思います。

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