2010年12月3日金曜日

タラウマラ族4 BORN TO RUN

デヴィッド・キャリアはアメリカの科学者で、呼吸と歩行走行様式の関係を研究している人です。
わりと知られている研究としては「トカゲは走りながら呼吸できない」というのがあります。

左右に波打ちながら移動するため、肺が交互に圧迫を受けまして、そのせいで適切な速度での換気が出来ないのです。

トカゲがチョロチョロ動いたかと思うと、パクパク呼吸しているのはそのためです。両生類・爬虫類のほとんどはこうした事情を抱えているため、持久走での狩猟が苦手で瞬発的な動作で獲物を捕らえようとします。


例外もいてオオトカゲなどは口の中に空気を貯めて、飲み込むように肺へ空気を押し入れることが出来ます。
もっと詳しく知りたい方はこちらを御覧ください→キャリアの抑制

個人的に呼吸と運動についていろいろと調べておりますので、この本でデヴィッド・キャリアが登場しているのは、望外の喜びでした。
いくつかピックアップして紹介します。

ダン・リーバーマン、デニス・ブランブル等、他の科学者も絡んでくるのですが細かいところを忘れてしまいました。話が混ざりますがご了承下さい。

■哺乳類を「走る/歩く」を基準に二分を試みます。以下要約です。

・走る部類は大殿筋が発達し、アキレス腱がある。
チンパンジー:大殿筋が全くないに等しい。アキレス腱無し

・走る部類は項靭帯(首の後の靭帯)がある。
あり:犬、馬、人間
なし:チンパンジー、豚

・人類で比べる
400万年前のアウストラロピテクス:アキレス腱なし、後頭部がなめらか
200万年前のホモ・エレクトゥス:アキレス腱の痕跡、項靭帯が収まる浅い溝があった。

■人類は発汗による放熱という動物の中では唯一の能力を獲得した。

・毛皮のある動物は、もっぱら呼吸で涼をとる
・体温調節システム全体が肺に託されている。
・汗腺が数百万もある人間は、進化史上に現れた史上最高の空冷エンジン
・チーターは直腸温40.5度で走るのをやめる。
(獲物を追うとき呼吸の持久力が尽きるのではなく、体温上昇が限界に来るため走れなくなる)

■多くの四足動物は走るときに内臓が浴槽の中の水のように前後するため呼吸に制約を受ける。

・チーター
前足接地:胃腸が前方の肺に食い込む→息を吐き出させる。
体を伸ばす:内臓は後方にスライド→空気を吸い戻す。

・この動きのために1ストライド=1呼吸となる。
・すべての走る哺乳類が、そのサイクルに縛られている。
・例外は人間だけ


ニューヨーク・タイムズの記事を翻訳して下さっているブログがありました。
人間はマラソンのために作られた : 英字新聞で読もう!で、NY Times によりますと・・・

「走るために生まれた(ランニングマン)仮説」は要するにダン・リーバーマン、デニス・ブランブルによって提唱されているようです。
上の記事を読むと、人によっては本を読む必要はなくなるかもしれませんね。

ウィキペディアにも要約がありました。ちょっと違う角度からですが、引用させてもらいます。
米国はユタ大学のデニス・ブランブル(Dennis Bramble)とハーバード大学のダニエル・リーバーマン(Daniel Lieberman)は2004年、初期人類は、動物遺体から屍肉を集め、石を使って骨を割り、栄養価の高い骨髄を得ることを生息手段とする、一種の腐肉食動物であったとの仮説を提唱した。人類は競合者に先駆けて動物遺体を手に入れるため、発汗による高い体温調整能力を始めとし、弾性のあるアキレス腱や頑丈な脚関節といった「速いピッチでの長距離移動の能力」を進化させ、広い地域を精力的に探し回る者として特化したとするものである。 このような適応の傾向と栄養価の高い食物が大きな脳の発達を可能にしたのではないかと説いた。

Wikipedia


さてここでお節介にも本書の意義。


呼吸・移動様式・進化、こんな三つのキーワードを巡ってくれる本はそうそうありません。非常に嬉しいことです。

この本(恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた)も多少そんな話に触れていますが、酸素濃度というのが私には難しかったです。




このシリーズ、もう一回続きます。



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