2010年12月9日木曜日

タラウマラ族5 BORN TO RUN

お断りするまでもなく人間は生き物です。

そしてまた人間も構造物です。解剖学が発達し、人間の構造は明らかにされたと思われています。よりミクロな世界、例えばDNAや化学反応の機序など、更なる研究が進められていますが、構造物としてみた場合、その意味や読み方はまだまだ研究の余地が残されているように思うのです。



それでは引用から

「建築物を見てみるといい」とハートマン博士は説明している。あなたの足の設計図を眺めてみれば、何世紀にもわたってエンジニアたちが匹敵するものをつくりだそうとしてきた驚異の存在が見て取れるだろう。足の中心となるのは土踏まずだ。重量を支えるためのデザインとして、これほど優れたものは歴史上見当たらない。あらゆるアーチの素晴らしさは、圧力をかけられると強さを増す点にある。押し下げられれば下げられるほど、アーチの各部分はぴったりとかみ合うのだ。有能な石工ならアーチの下に支えをつけるような真似はしない。下から押し上げれば、構造全体を弱めることになるからだ。足のアーチをあらゆる面から強化するのは、二六の骨、三三の関節、一二のゴムのような腱、そして一八の筋肉からなる伸張性の高い網であり、これはいずれも耐震構造のつり橋のように収縮する。



BORN TO RUN P252(足底筋膜炎にかかわる記述)


>有能な石工ならアーチの下に支えをつけるような真似はしない。
これは靴の土踏まずにクッションを入れることを批判しております。
自分の足を活かすには?足の働きを引き出すには?
意味深い一節です。
>有能な石工
それはあなた自身のことと言えます。


本書では靴のクッション性を高めたことで踵からの着地が増え、故障が増えたとしています。
私自身は長距離においてはそう思いますが、全ての局面での踵着地は否定できないと思っております。

進化途上を考慮すると、踵が接地すること自体が新しい能力であり、現生種絶滅種を比較してもマイナーな部類ですので、その使い方はまだまだ発展途上にあるように思えます。

発展途上にあるということは、その能力はいまだ失いやすい面があるということです。多くの文明人が失い、タラウマラ族は今もそれを活かしているのではないでしょうか。


本書に登場するウルトラマラソンランナー、スコット・ジュレクは走ることを追求するために日本の山岳修行者にまで学んだそうです。体を活かす方法とは、ひとつの智慧であると思われたのではないでしょうか。


私自身は療術を学びながら最終的に井本整体に辿り着きました。体を活かす方法と智慧が詰まっていたからです。足だけ触ってもみな違い、そして働きの悪いところを見つけ、体全体との関係を読む方法を教えてくれました。


もちろん体の読みは他の世界にもありますが、観察結果に過ぎないものが多いように思えます。
「読み」とはそこに何の骨があるということではなく、より総合的、包括的な問題と思います。
体の読みとは、そこに炎症があるとか、ここが歪んでいる、とかで終わることではないと思うのですが如何でしょうか。



この本では、体の構造を踏まえ、これを読み、活かす方法を探ります。
その智慧と結論をタラウマラ族から見取ろうとするのです。
そしてそれが内面的な変化までもたらすことを見つけます。
その道程だけでも、著者の行動力に敬服します。


そして白人でありながらタラウマラの世界に身を投じたカバーヨ・ブロンコ。
彼もかつてそこに何かを見つけにきた一人だったのです。


最後に印象的な一節を紹介します。
カバーヨ・ブロンコが著者に語る場面。


こんな話をした。もし本気でララムリ(タラウマラ族のこと:磯谷注)を理解したいなら。九五歳の男が山を越えて四〇キロの道のりを歩いてきた場に居合わせたらよかったんだ。どうしてその老人はそんなことができたか分かるか?誰からもできないとは言われなかったからだ。老人ホームで死んだほうがいいと言うものはいなかった。人は自分の期待に沿って生きるんだ。


BORN TO RUN P71



はてさて、私たちはどうでしょう。
何も走ることだけではありません。


われわれ日本人も、
自分の体を活かすことを
もっともっと考えてもいいのではないでしょうか。



(シリーズお終い)






2 件のコメント:

  1. 「人は自分の期待に沿って生きるんだ」という一言が印象的ですね。
     
    私は自分に何を期待しているのだろう?と あらためて考えました。
    結論、出ましたよ。でも 内緒です。
    心の中に大切にしまって、それを大切に育てていくことにいたします。

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  2. おぉ!いいですね。
    ぜひ大切にされてください。

    返信削除

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