2020年5月30日土曜日

腕の挙上と腰椎1番の人間性

腰椎1番があるのは人間だけです。
サルの場合、そこは胸椎13番と呼ばれます。
分かるでしょうか?
13番めの胸椎が腰椎に変化したのが人間です。

何が変化したのでしょう?
運動が変化したのです。

何の運動が変化したのでしょう?
腕を上げる運動が変化したのです。

正確に言えば腕の挙上方法のバリエーションが増えたのです。


腕の挙上はサルでもできますが、サルの挙上は人間らしくありません。
人間らしい挙上は例えばバスケットボールでシュートを打つときに、クイッと背中を入れるような伸ばすような動作に見られます。バレーボールのトスもそうですね。背中をクイッとやります。
あのクイッのときに使っているのが腰椎1番です。ああいう動作は非常に人間らしいものです。人間にしかできません。サルはあんな風に腰椎1番で腕を上げることができません。

空中で腰椎1番を自由自在に使えると、バスケットボールでエアプレイと呼ばれる技術が可能になります。バレーボールのアタックも腰椎1番が自由でないと、格好良くはなりません。

また跳んでから打つまでの時間は、腰椎1番の緊張弛緩でコントロールされています。
跳んだあとのわずかな無風状態と、急激な緊張にわれわれは魅せられます。
波のうねりを思わせるあの感じは、ほとんどの人の日常生活に欠けているものであり、思い出したいものなのでしょう。

残念なことに文明社会の人間は、動物としては恥ずかしいレベルにまで運動が衰退しています。
人間の能力は本来どのくらいが標準なのか、もはや誰にも分からないと思います。
せめて思い出そうという努力は必要でしょう。
わたしももちろん衰退している一人なので、少しでも本来の姿に戻りたいと思っております。


肩の話に戻ります。
知らず知らずのうちに腰椎1番が衰え、腕の挙上が肩関節だけになっている人は珍しくありません。
肩関節だけで腕を挙上しても、体は融通をきかせてくれますが、年齢とともにそれも難しくなってきます。
年をとるほどに、うまく使わないと体が許してくれなくなります。

年功序列に優しくしてほしいと願っても、体は年とともに判定を厳しくしてきます。
なんだか不公平なようですが、自分の体の言うことですから聞くしかないですね。

「老いては子にしたがえ」と先人は諭しましたが、
現代は「老いては体にしたがえ」を知らねばなりません。なにしろ寿命が伸びているのです。

肩が上がらないのは、直接的には肩関節の問題ですが、その前に肋骨が硬くなっており、肋骨が硬くなる前に、腰椎1番が硬くなっております。人によって違いはありますが、たとえばこうした道のりを逆にたどることで、回復に向かいます。


背骨を指で確認していると、胸椎12番が腰椎のようになっている人がおります。
わたしは人間の方向性を感じます。
数百年後、そういう人が増えているかもしれません。

しかしもしかすると、胸椎13番が復活してしまうかもしれません。
その時、ヒトは腕の挙上はもちろんのこと、二足歩行もできなくなっているでしょう。

★★補足★★
分かりやすくするために腕の挙上を腰椎1番としましたが、厳密に言うと腰椎1番と胸椎12番の連携によるものです。

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