脊椎動物の中で、哺乳類だけが特殊な骨の使い方をします。
もちろん人間も例外ではありません。
進化史の中で運動の進化は数限りなく起こっておりますが、骨の使い方が変わるという進化は極めて特殊な出来事だったと考えられます。
前回からこうした主張のもとに進めておりますが、たぶんかなり分かりにくいかと思います。
わたしもどうやって説明すれば分かりやすいか考えあぐねている次第ですが、後肢(人間で言う下肢)を例に取るのが分かりやすいのではないか?と思い進行しています。
単純に説明すれば、体重や運動による負荷が骨の中を貫通していくのが哺乳類の特徴です。
爬虫類も鳥類も骨の外の筋肉・腱で負荷を受け止めるようになっているのですが、哺乳類だけが骨そのもので受け止めます。
なので「コツ(骨)を知る」「骨で動く」などの体の運用理論は、実に哺乳類以降のことだと思っています。
仮に後肢の骨が全て直立していれば、絵的に分かりやすいのですが、ほとんどの場合そうではありません。
それでは、どのように読んでいけばいいのか説明していきます。
ネコでもイヌでも歩いているところを観察してみれば分かりますが、膝の角度が固定されています。
正確に言うと、固定されている時間とそうでない時間がありますが、まずは固定されている感じを見つけてみることです。
固定されている時間は、後肢に体重が掛かっている時間です。
固定から開放される時に、蹴る動作が入ります。
走っている時は、膝が固定されている時にアキレス腱と大腿後側が伸ばされます。
固定から開放される時、つまり荷重が抜けて行く時に瞬発力が発揮されるわけです。
これは現実に観察して見て取るのが大変なので、チーターのスロー動画などを観るほうが分かりやすいですね。
哺乳類の歩行走行には、こうした膝関節の角度固定期があるのが特徴です。
このため見た目には「ぐいっぐいっぐいっぐいっ」というアクセントを印象として残します。
ダチョウでもオオトカゲでもワニでもそうですが、歩行走行にこうしたアクセントを印象として残しません。
彼らの四肢は関節の固定という相を持たずに動作するからなのです。
これは恐竜でも同じです。
恐竜動画などでは哺乳類の動きも参考にしているせいか「ズシン、ズシン、ズシン」といった膝固定特有の運動をするものが多いのですが、爬虫類の構造からするとあり得ないものです。
なぜ固定という相を持たないかと言うと、支持脚から重心を逃し続けるからです。
重心が逃げている分だけ負荷が軽いため、関節が自由に動きます。
移動というロジックから考えると、支持脚から重心が逃げていかなければ進むことが出来ないので、哺乳類のほうが特殊です。
では、どうして膝関節の角度を固定するかというと、アキレス腱と大腿後側を伸長させて、瞬発力を生むためなのです。
膝が固定されている時も、足首と股関節は固定されません。なので膝を挟んで上と下が鏡像のように動いております。
こうして負荷を一時的に集約させて歩行走行のエネルギーに転換するのが、哺乳類の特長です。
爬虫類や鳥類は支持脚から重心を逃し続けるため、動作に抑揚がつきにくく、ヌラヌラとした印象を残したりします。
さて一時的に負荷を集約させるとき、骨にはそれなりの圧力がかかります。
膝関節が曲がった状態のまま、どのようにそれを処理しているのでしょうか。
ネコやイヌ、ネズミなど概ね90度で固定される場合が一番わかり易いと思います。
脛骨から伸びている大腿四頭筋が縮み、大腿骨が脛骨に押さえつけられます。
なので大腿骨の遠位端は長軸と垂直をなす角度に強度が求められます。
もちろん長軸方向にも強度がありますので、二つを補強する斜めの強度も持ち合わせます。
ポイントは大腿四頭筋の存在となります。これがないと大腿骨を脛骨に押さえつける事ができないので、膝が固定されません。
膝蓋骨と膝蓋腱も重要となりますが、これはまたいずれ。
さて人間ではどうでしょう?
「哺乳類全般なんかよりも人間をやれ」
と思われている方もいるかと思います。
人間も膝固定の相を持ちます。
しかし面白いもので、人によってばらつきがあるのです。
人間の膝は固定されていると言っても、元々が浅い角度なので見分けがつきにくいのですが、歩行中によく動くヒトと動かないヒトがあります。
何が違うでしょうか?
答えは既に出しているように、重心の移動が絶え間ないか支持脚に十分に乗るかに掛かっています。
どちらが優れているということはありません。
膝の固定は大腿四頭筋による前後的なものですので、右へ左へ重心が動く人は膝もよく動きます。これは坂道を駆け上がる時によくそうなります。
もう一つは分かりにくいのですが、上へ抜ける人も膝がよく動きます。階段を登る時にはよくそうなります。平地ではファッションショーのモデルに多いですね。
膝に注目して観察するのも一興ですが、動きの印象に膝固定特有のアクセントがあるかどうかで見分けるのも一興です。
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