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2012年1月21日土曜日

寒い日の二冊~その2



世界のトップクライマー山野井泰史・妙子夫妻のギャチュンカン登頂を描いたノンフィクションです。

山野井氏の本ですから、
当然クライミングの話と普通思うわけですが、
実にそのとおりです。



ところが私は沢木耕太郎氏が書かれているので、山野井氏の日常や生い立ち、山への思いなど、山以外での山野井氏が描かれているものと思っていたのでした。
十年くらい前までは沢木氏の作品をほとんど読んでいたので、登頂という本番よりも、それを支えている生活に焦点が置かれていると思ったんです。なにしろ沢木氏にはそういう作品が多いのです。そしてそこが魅力なのです。

なのでこの本では裏切られたのですが、結局惹き込まれたのでした。

「凍(とう)」というタイトル通り、凍てつく寒さに包まれます。
遭難寸前の中、ギリギリの選択をしていく山野井氏。
世界最高峰のクライマーということは知っていたので、なおさらその状況の過酷さを思わされます。


雪壁でほとんど吊られたままのビバーグ、
火をおこして水を作ることも出来ず、氷をひと欠片口にします。氷を溶かすほうが消耗すると言われておりますが、たとえ冷たい水でも水分になるものを取るほうが大事と思ったそうです。

テントもないままでのビバーグ、
寒さに震えが起こる、その震えを「生きる力」の証と思おうとします。
「眠ったら死ぬかもしれない」そう思いながらも、諦めれば死ぬ、諦めなければ死なない、そう考えます。そして眠りに落ち、夜が明け、目覚めるのです。


少し重い、と感じるかもしれませんが、生命力あふれるノンフィクションです。
興味のある方は読まれてみてください。

「寒い日の読みたい2冊」でした。

寒い日の二冊~その1

凍てつく空気感と生命力
そんな二冊をご紹介します。


寒い日が続いております。
凍てつく、、、と表現するには千葉県の冬はまだ生易しいでしょうが、
そんな気になることもあります。


その凍るような空気の感触が、
なぜか心地よくなることがあります。

雪に心躍らせるような童心はすでに彼方のことですが、
寒さで顔がカチリと硬直してくると、
―今年もこういう日がやってきた。
そう思うのです。

寒くて体の中が燃え上がるのかもしれません。


 

カキーンと空気が凍るような晩、
布団に潜りながら子供に読み聞かせていると、
心は北海道の山の中に連れ出されていきます。

そういえば去年もそう思いながら読みました。
好きな絵本です。

表紙の絵、
きたきつねが何かを見つけた瞬間です。
この顔がいいですね。
きたきつねの見たものに空想が巡ります。

読む前は大味に感じた版画でしたが、
読んでいるうちに、大味が躍動感に変わり、
素敵な作家だなと、最終的に思ったのでした。

他の作品もいくつか読んでみましたが、
この作品が今のところ一番です。

寒い日に読んでみたい一冊でした。