2009年9月7日月曜日

風の中 ~放哉の俳句から~




追つかけて 追ひ付いた 風の中






自由律俳句ながら、五、五、五のリズムがあり、スピード感あふれる俳句です。


文法風に表現すれば、

進行形 > 過去完了 > 今

という流れがあります。

動きにあふれる過去から、静かなる「今」という瞬間が、急激に拓けるような感じがします。


夢でも恋愛でも結構ですが、追い付いた瞬間に、過去は忘却の彼方に追いやられることがあります。

病気でも風邪でも結構ですが、回復した後には、病んでいたことを忘れてしまいます。

もちろん頭で思い出せることはありますが、追っかけた時の感覚は素直には呼び起こせません。


呼び起こしたほうがいいものも、あるでしょうが、

呼び起こさないほうが、素直に生きられることも多いものです。

上手く忘れている人のほうが、健全に生きてるように見えるのは私だけでしょうか?

生きている中で、「今」という瞬間がいかに大きなものかと、思い至ります。


ところで、
放哉の追い付いた風は本物の風だったのかもしれませんが、

漂泊の生活に身を投じた放哉ですから、「風のような何か」だったのでは?

「今」という瞬間に心が開いた時を詠ったのでは?

と個人的には思っています。


十数年前から時々、この俳句が好きで・・・という話を人にしてきました。

しかも必ず間違えて、


追いかけて つかまえた 風の中

と話しております。

何度か読み返して覚え直すのですが、

必ず間違えたものに変わってしまいます。

間違えて話した方々、申し訳ありません。

そしてこれからも間違えるでしょうが、

暖かい心で、ご指摘下さいませ。

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